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餓狼激闘編第二話 ~は行の旅立ち~

Hキー連打、連打、連打。
ショートカットキーを連打し、一体何度ライフポーションをがぶ飲みしただろうか。
げんのうはHPバーを増減させながら、黒オオカミの群れから逃げ惑っていた。



(あばっ、あばば! しぬ!しんじゃうぅうう!!
でもなんか連続デッドリーで俺生きてるぅう!)



スマッシュを食らって吹っ飛び、即座にHキー連打。
そして追いすがる一匹をカウンターで弾き返し、別のオオカミのスマッシュを食い再びHキーを連打する。
運がいいのか悪いのか、黒オオカミ達は毎回スマッシュのみで攻撃して来る上に、毎回デットリー状態で生き残るという状態を繰り返していた。

もしステータスに悪運の項目が存在すれば、間違いなくその数値はカンストしているであろう程の連続デッドリー。
この現象が永遠に続けば、恐らくこの先のキアダンジョンロビーへ逃げ込むことも可能だったろう。
だが、生憎手持ちのライフポーションは底を付きかけ、回復手段を失えばいくら悪運が強くてもデッドリー状態にはなれない。



(なんなんだコイツ等は!!どこがほのぼのファンタジーライフだよ!!
ってああああ! そこの人超逃げてえええええ!)


遭遇


そして逃走コース上に現れた見ず知らずのプレイヤーは悪運が齎した助け舟か、はたまた新たなトラブルの前触れか。
どちらにしてもこのままでは、無関係のプレイヤーを巻き込んでしまうだろう。
何とか軌道修正を試みるも黒オオカミの巧みなスマッシュ捌きはそれを許さず、げんのうとオオカミの群れは真っ直ぐにそのプレイヤーへ向かって行く。


ここでオオカミの群れのターゲットから外れなければトレインが通り過ぎて行くだけで済んだのだが、そうは問屋が下りないのがマビノギクオリティである。
無関係のプレイヤーをスルーできるかというタイミングで、待ってましたと言わんばかりに砕けるHキー。
あまりの勢いに宙を舞うそれに意識を奪われ、そのほんの一瞬の内にげんのうは息絶えた。
もちろんその場所は見ず知らずのプレイヤーのすぐ隣である。



(とうとう死んだ・・・
我ながらしぶとい奴だ、しかもトレイン行為としてはこれ以上ないタイミングじゃないか?
とりあえず生き返って応戦せねば本当にMPK野郎と思われる!)



残念ながら課金をしていないので多大な経験値を失ってしまうが、背に腹は代えられない。
見ず知らずのプレイヤーに迷惑をかけ、掲示板で晒されてしまうよりは遥かにマシだろう。

数日前に師匠が教えてくれたばかりの、マビノギのみならず、オンラインゲーム全般におけるマナーや違反行為。
そしてそれを行ったプレイヤーの末路が今の自分と重なる。
脳裏を過った最悪の結末に、気が付けば自然と右手が復活ボタンをクリック連打していた。
某匿名掲示板やSNSサイト、果ては個人のブログで晒されない為には彼、もしくは彼女にターゲットが移るより先もにトレインを続行せねばらない。


WS000223.jpg

(ここは俺に任せて!あんたはにげてくれっ!
てかその場復活だとHP全然回復しねぇのな!
っっぎゃあ!しんだ!)




しかし復活後即撃ち込まれるスマッシュに、げんのうの命と膨大な経験値が只々無駄に散って行く。
こうなったらとにかくこちらにMPKの意思はないことを伝えようと、地に伏したまま全体チャットでコンタクトを試みる中の人。




「にげて」



悲しいかな、中の人のタイピング能力では数秒かけて単語一つを打つのが精一杯。
その間にプレイヤーもオオカミにターゲットされてしまい、一瞬で地に沈んでいる。


(うああああ申し訳ございませええええん!!
決して!決っしてMPKなどではございません! お願いだから晒したりしないでねええええ!)



「ごめnさい」



沢山の思いを一言に込めたつもりだが、タイプミスが気まずい雰囲気に拍車をかける。
自分が逆の立場だったら確実に切れていただろう状態だ。
と、思いきや以外にも同じく横たわるプレイヤーから返事が返ってくる。



「大丈夫ですか?www」

「あい」

「びっくりしたー」

「おんとにごめnさい」



さらなる打ち損じと、Hキーがテイクオフした為に「は行」が打てない怪文書にも関わらず、巻き込まれたプレイヤーは好意的だった。
この間も二人の遺体の周りではオオカミたちがグルグルと群がっている為、すぐに復活することを諦めてとにかく謝罪に徹するげんのう。



「MPKであないです」

「ですよねーw」

「しにたい」

「もう死んでるwww」



以外と気さくな人物のようでほっとする中の人だが、オオカミに包囲されている事実は変わらない。



(どうする俺、どうする!?
この人もあんまり強そうじゃないし・・・師匠に助けを求めるか?)



「なかなかタゲ外れませんね~」

「あい」

「撃退します?手伝いますよ」

「えいちキー壊れた」

「ちょwwwだからあいwww」

「かいふくむり」




(とりあえず誤解は解けたみたいだけど・・・なんで全然タゲ外れないんだよ。
いっそ久々にゾンビオンラインするっきゃないか?
やっぱり責任持ってゾンビ化するしかないか)



「おれいきます」

「ゾンビオンラインですか?www」

「あい」

「面白そうだから手伝いますよwww」



(うわーいい人発見。
余計ツラくなるわ。
っだがお言葉に甘える! それが初心者の礼儀というものだ!
多分な!)



「おねがいしまs」

「お供します^^」



中の人のタイピング速度もあってかなりの時間がたっていたのだが、いまだにグルグルと回り続けるオオカミ達。
当然その中には巨大黒オオカミも居るのだが、ゾンビ化を決意した二人は図らずとも同時に復活ボタンをクリックするのだった。



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餓狼激闘編第一話 ~アフロハンター光臨~

ティルコネイル東の草原。 そこで一人のアバターが黒オオカミ狩りに精を出している。
頭上に表示されているアバターネームはげんのう、つい最近エリンに降り立ったばかりの初心者プレイヤーだ。

アバターは黒オオカミへ果敢に襲い掛かり、スマッシュ、カウンター、アイスボルトを駆使し、何匹ものオオカミを倒し続けている。
その動きは随分と手馴れている様だが、操作している中の人物にはあまり余裕が無さそうだ。




WS000389.jpg





(スマッシュ・・・カウンター・・・って、なんで反撃してこないんだよ!
こういう時はアイスボルトで・・・うあ!?なんで今来る!アタックアタック!!)


カウンター待機を解いた瞬間に思いもよらぬ反撃を受け掛けるも、黒オオカミの攻撃が運良くスマッシュだったおかげで難を逃れたげんのう。
おかげでパニックに陥いるが、マウスよ砕けろと言わんばかりのクリック連打がなんとか黒オオカミのHPを削り切り事なきを得た。


(あぶねーあぶねー。お、マナポゲッツ! あとちょいでノルマ達成だな。
さっき師匠からメッセで合流するぞって言われたしもう少しで鎧が買える!)


この狩りの目的は黒オオカミがドロップするマナポーション30で、今拾った物を合わせれば集まった数は全部で35個になる。
初プレイ当初から鎧を手に入れたかった彼は購入資金を貯める為、知り合いが買い取ってくれるというマナポーションを集めているのだ。
取引相手のプレイヤーとは数日前に知り合ったばかりだが、こちらが初心者ということもあって戦闘の手ほどきを受け、アイテムをそこそこ高値で買い取ってくれる等色々とお世話になり、今では師匠と呼ぶ人物である。
そして今回の目標個数を買い取ってもらえれば、晴れて予定金額を満たすことができるのだ。


(おし、次のターゲットは・・・あら?一匹も居ねぇ。
まさか、リポップ速度を上回ってしまった・・・だと!?
ククク、もはや貴様らなんぞ我の敵ではないわ!)



WS000399.jpg





なんと初心者にも関わらず黒オオカミのAIに対するルーチンワークがなんだかんだで身についていたげんのうは、一帯にいる黒オオカミを一掃してしまったのだ。
黒オオカミが一匹も居なくなったフィールドでポツンと立っているアバターとは対照的に、PC前で邪悪な笑みを浮かべる中の人。
ニタリ、と口元が吊り上がると同時に新たな血を求めて移動を開始する。


(次の獲物はどこだ? ・・・・・・クハッ! 居た居たァア! 我が太い木の棒の錆となるがいい!!)


タイミング良く進行方向に黒オオカミの群れがポップしたのを認める、と同時に益々その笑みを凄惨なものへと変えて突撃した。
そして開幕スマッシュを仕掛ければ、幸先がいい事にクリティカル発動で一撃の元沈む黒オオカミ。
流れが彼に味方している様にも思える展開だが、しかしてそれは今から始まる激闘への火蓋を切った瞬間であった。


(フヒッ! 次はどいつだぁ~? あ?)


次の獲物を品定めし、と舌なめずりしていた中の人の視界に「そいつ」は飛び込んできた。
実は黒オオカミの群れがポップしたのと同時に画面上部にあるテロップが流れたのだが、ハイになっていた中の人は、それを見事に見逃していたのだ。
つまり、テロップの内容というのは。



―ティルコネイル東の草原に巨大黒オオカミが出現しました―。


theme : マビノギ
genre : オンラインゲーム

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